Webディレクターってなんだろう その2
先ほどの記事で、日頃(いや、日頃というほど頻繁ではないのですが)私が自分の仕事である「Webディレクター」は何をやっている人なのか、また、「Web検定」で(2007年現在)触れられているWebディレクターの定義について紹介しました。
『ウェブの仕事力が上がる標準ガイドブック 3 Webディレクション』によれば
Webディレクター
《大 きく分かれて2つの役割がある。1つはプロジェクト計画からコンテンツオーナーや発注者の要望をブレイクダウンし、制作作業が進められるよう設計書や仕様 書にまとめ、関係者間で認識をすり合わせ、調整する役割。もう一つは、設計書や仕様書をベースにデザイナーやコーダーに作業指示を出してアウトプットを入 手し、コンテンツオーナーに対してデザイン案や個別ページの確認を依頼、必要な調整を行って完成させていくという制作進行管理の仕事
である。》
※第二章「リソース管理」にある「デザイン開発における主要なプロジェクトメンバーの役割」の項に書かれた「ディレクター」の定義。
上記をフレーズごとに、私の理解や実務の場面での言葉(会話)を使って説明してみます。
その前に…はじめにお伝えしておきます。
・この記事の主な目的は「Webディレクターってなんだろう?」と思われている方たちへの説明。
つまり、読み手はWebディレクターを知らない老若男女および何かWebの仕事をしたいと思っている人、せざるをえなくなった人をターゲットにしています。
・Webディレクターの数、ないしWebディレクターの在籍する会社の数だけ、仕事ぶりもそれぞれです。
・会話例がある場合、実際はオトナ語で話され更に固有名詞(人名・会社名・サービス名)が加わります。
では、説明をはじめます。
1つはプロジェクト計画からコンテンツオーナーや発注者の要望をブレイクダウンし、
プロジェクト…期間や目的が限定されているお仕事。限定というのは永久に続くのではないという意味。
「A社のWebサイトを新しくする」「B社のWebサイトの管理が面倒なので何とかする」
プロジェクト計画は、「A社のWebサイトを新しくする」にはどうするか?について、リソース(資源。つまり働く人・コンテンツ・お金・時間…など)を考慮にいれて、計画をたてることそのもの、ないし計画の中身。
コンテンツオーナー…コンテンツの「ヌシ」。
コンテンツとは、ミクロな意味で言うと、情報を含んでいる何か。文字や図絵、映像、音声のそれぞれないしいくつか組み合わせたもの。
Webサイトをつくる上でのコンテンツは、あるジャンルやカテゴリーに属した情報のまとまり。スーパーマーケットに喩えるなら精肉コーナー、青果コーナー。会社のWebサイトにあてはめると、だいたいの会社のWebサイトには採用情報、サービス案内、本社へのアクセス…といった「コーナー的なもの」がいくつかあり、その裏にはA社に誰か担当の社員さんがいて、ああしてこうしてと指示したり、一家言もっている。
発注者の要望…「Webサイトをつくって」ないし「つくりかえて」、「コンテンツを追加して」などとお願いすること。できあがったものを「もっとこうして」「こんなんじゃお話しになりませんのでなんとかしてください」とフィードナックするのも要望のうち。
発注者は、厳密には書類レベルでの発注する人間と、受注者に対し電話やメール、打ち合わせで依頼をかける人間にわけられ、両者は必ずしも同じ人ではない。
ブレイクダウン…かみくだくこと。伝え手の言葉に5W1H+伝え手と受け手の両方がほぼ同じイメージをもてるような例示を加えること。
発注者の要望
「もうすぐバレンタインだから、TOPページにバナーつけてよ。ばーんと派手に!」
↓
ブレイクダウンした結果(例です)
「1月XX日より2月XX日まで、TOPページの「おしらせ」コーナーにバナーを設置。写真画像はA社のバレンタイン商品を使用、サイズは縦○○ピクセル、幅○○ピクセル。Flashやgifアニメーションは使用しない。デザインは文字のフォント、トーンは現状のサイトのイメージを踏襲しつつ、赤とハートを多めに使用し、2パターンを用意する。20代OLの興味をひきたてるものとする。A社担当者への一回目のデザイン案提出は1月XX日。」
日本語は曖昧な言語で、かつ日本文化の中で大人になった私たちは「言えば判るよね」という暗黙の了解が多い。以心伝心なフィーリングは貴重な感性であるが、Web制作においては、目に見えるもの(Webコンテンツ、Webサイト)を前提に仕事が発生しているので、二つ返事で仕事をしてしまうと、解釈の違いが生じ、出来上がってから「なんじゃこりゃー」となることが多い。
仕事の現場が日本語圏であっても英語圏であっても、伝え手と受け手は別の人間なので、頭の中に思い描いているものを一致させるように具体化していく。人はそれをコミュニケーションと呼びます。
ここでのWebディレクターの役割は、伝え手(発注者)の言いたいことを具体化すると共に、それが実現する(パソコンや携帯電話の画面に目に見える形にする)ための「なぜ・いつ・どこで・誰が・何を・どうやって」を明確にしてあげ、了解を得ること。
制作作業…上記の例でいうと、「ばーんと派手!」なバナーを目に見える形にすること(絵を描いたり文字を選んだり配色を考えたり、コピーを書くことなど)、そして掲載する先であるTOPページに載せるように加工すること。制作作業が進められるよう設計書や仕様 書にまとめ、関係者間で認識をすり合わせ、調整する役割。
大雑把に言えば、世の中に頼まれたものを具現化・可視化する作業です。
設計書や仕様書にまとめ…Webというものは、「餃子ください」と頼んで十数分後に焼かれた餃子が出てくるような、頼めば出てくるものではないのです。なにかと決めごとが多い。餃子だけを作っているわけでもなく、お金もそれなりにかかりますし、関わる人も複数になり、そう失敗はできない。
上記の「制作作業」をする制作者に「派手なバナーを」と頼めば、発注者本人かその知人でない限り、曖昧すぎて不安になります。ですので、建物で言えば設計書、料理で言えばレシピを用意して、制作ができるように準備をします。
文書は発注者の要望を聞き取り、ブレイクダウンした人がまとめるのが効率的なので、ディレクターが設計書や仕様書とよばれる資料に落とし込むケースが多いです。
Webサイトの質と、発注者と受注者のコミュニケーションの質を保つために、設計書や仕様書といった文書は存在します。
「決めごと」を文書にするメリットとしては、次の項目にも関連しますが、文書が存在しない時にくらべて発注者とのコミュニケーションもスムーズですし、継続して同じ制作者に依頼する際も、前に作った文書をもとに検討したり、改善することができること。トラブルを避けたり、予想外にお金や時間がかかるのを防ぐ役目もあります。
(資料は話し合いのベースになるので別名「叩き台」とも呼ばれます)
関係者間で認識をすり合わせ、調整する役割…餃子屋さんで餃子を頼む際もそうなのですが、オーダーしたら店員さんが確認しますよね。Web制作の場面でも、確認をとります。
大抵、確認をとるといっても一発OKではありません。「すり合わせ」と「調整」の結果、制作がスタートします。
ディレクターのアクションとしては、上記の参考文献に言及されていませんでしたが、まず打ち合わせを設定します。発注者から打ち合わせの日程を指定された場合も、行けるかどうかの返事をしたり、打ち合わせで何を話すかの議題を予告したり、資料を揃えます。これが案外、時間のかかるものです。
すり合わせというのは、制作者の「あなたの要望をブレイクダウンしてまとめたけど、こういうやりかたで進めてOKですか?」と確認をとり、それに対し
発注者に「うん」とか「いやーそうじゃなくて…」などと返事をもらい、確認をとりながらどういう考えを持っているのか、聞き出します。
一発OKでない場合や、さらなる要望が出た場合、「いやーそうじゃなくて…」ですとか「なんか違う」「それって時間かかりすぎじゃないの」「今はやりのB社っぽくできないの?」といった返答をもらった場合は、調整します。
調整は打ち合わせのその場で出来ることと、宿題として持ち帰り、(早いうちに)済ませるものの2種類があります。発注者に対し更に質問をしたり、時間がかからないようにするにはどうしたらいいか考えて提案したり、B社っぽいテイストかつA社らしさのあるバナーができないか、デザイナーさんに相談したり。
「いややはり難しいです」と要求を断ったり、妥協案を出すのも調整のうちです。
制作の前段階までの説明で、かなり字数を割いてしまいました。「その3」で「もう一つは…」以降の作業について述べたいと思います。